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ペーパーヘリコイド屈折望遠鏡

「天体望遠鏡は既製品より自作の方が高くつく」 とよく言われます。例えばアクロマート屈折鏡筒の場合、口径80mmの新品でも3万円以下(例えばスコープタウン製)で購入できそうですが、自作で各パーツを買い揃えるとこれ以下のコストに抑えるのは至難かも知れません。
そこで性能をなるべく落とさずに安価に自作する方法を試して見ましたのでご報告いたします。

スコープタウン 
80 Φ f 560 mm アクロマート
1]対物レンズハウス (ペーパーヘリコイド:自称)
さすがに対物レンズは自作できませんので、スコープタウンの80mm:F7アクロマートを購入;これは金属セルと一体となっています(8,380円)が、特にお願いして裸のレンズだけを購入(7,000円)しました。
ただしこのレンズは製造過程で芯取りがされているらしいので、購入時にメーカー(スコープタウン社)にお願いして2枚の組み合わせレンズの相互位置に目印をつけてもらうのが無難です。入手後アサヒペンの「ツヤ消し水性マーカー マットブラック240円」を使ってコバ塗りしました(右図)。
このレンズを使って新たにレンズハウスを作る訳ですが、考えてみると、特にF値の大きな長大な望遠鏡でない限りは、レンズハウスの部分を調節(回転)してピントを合わせるようにすれば、接眼部に高価なヘリコイドやラックアンドピニオンを購入しなくて済みそうです
そこで、ボール紙製ヘリコイドを作成して見ました;
まず下の図 @ で示すように、厚さ 1mmの黒ボール紙を幅 4センチ、長さ 80センチほどに切り、中央 (図の点線部分) にカッターで浅く切り込みを入れておきます。更に図 @ のA の部分の裏側に幅 2 センチの極薄両面テープを貼り、全体を図 A のように主鏡筒 (この場合はΦ75mmのボイド環) の周囲に隙間無く巻きつけて貼り付けます (図 A のようになります)。
次に、予めつけておいた切込みに沿ってカッターを使って切断し、テープで張り付いていない部分 B を取り除くと図 B のようになります。
取り除いた部分 B を 35センチほどに切断し、更に 0.5mm ほどカッターで正確に切り取ります (幅が 19.5 ミリほどになります)。この部分の外側に予め極薄の両面テープを貼り付けます(図 C)。
図 B の隙間部分に C を巻きつけ、外側からケント紙を細心の注意で巻きつけて固定。このケント紙の上から更に厚手のボール紙をぴっちりと巻きつければ図 D のような円筒が出来上がります(この D の操作が成功の決め手となります)
D のレンズハウスを B の鏡筒にネジ込み回転させると約 40mm ほどの焦点移動が可能で、回転は少し固めにしてヘリコイド部分にシリコンスプレーを吹き付けておくと滑らかなフォーカス合わせが可能です。また驚いたことにバックラッシュと言えるものは実際上皆無でした。

なお、主鏡筒 B とレンズハウス D の境目に目盛環をつけておくと正確なピント合わせができます(下左の写真)。
[2]鏡筒バンドとアリガタ
100Φボイド管を幅30mmに切断、続いて長さを60mm短縮すると内径約80mmとなります。これを取り巻くリングを厚さ0.7mmのアルミ板で作成しました。
上右図のようにコの字型アルミ材と組み合わせて固定するとしっかりした鏡筒バンドが出来上がります(これは金属製バンドに近い強度が得られます)。
アリガタは木材を断面が台形になるように鉋をかけて削り、側面の両側に厚さ0.7mmのアルミ板を両面テープを使って張り合わせます。これを鏡筒バンド部分と組み合わせてしっかりネジ止めするとオール金属製の既製品ほどではないものの実用的に十分な強度が得られます(長時間のガイド撮影では不十分かも??)。

[3]接眼部
A 接眼部A(2インチスリーブ用;右図)
外径約68ミリ、厚さ約8.2ミリ(75Φボイド環の直径を縮めたものを二重にしてボンドで固めたもの)です。厚さが充分なので鬼目ナットを植え込み2インチスリーブをしっかり固定できます。また主鏡筒末端からの多少の摺動(目盛付き)が可能です。
なお、外周は厚手の光沢紙で、黒の塗りつぶしと白字の目盛などは印刷です(以下同じ)。
B 接眼部B (31.7mmスリーブ用;下図)
偶然発見した塩ビの接続管の内径が 31.7mmにぴったりでした (下左図); この周囲にΦ50mmのボイド管の径を調節して外径をほぼ2インチとしたものを固定し、内面に植毛紙を貼り付けて完成です (下右図)。

[4]アタッチメント
 接眼部Aのみの使用で2インチ天頂ミラー (下左図) またはフリップミラー (下右図) が装着可能です。

接眼部 A および B の使用では 31.7 ミリ天頂ミラー (下図) が可能です。
ご覧のように、主鏡筒に跨るレンズハウスのオーバーハングが長いため全体的に 「ずんぐり」 したスタイルになりますが、これもペーパーヘリコイド式の宿命(?)です。
 なお、この部分がレンズの重みで「お辞儀」をしないように主鏡筒のヘイコイド部分の厚みを僅かに調整してあります。この際,焦点調節のためにレンズハウスを回転した場合にレンズ面と垂直の光軸もコマの軸のように回転しては困りますので,それが最小に抑えられるように光軸調節アイピースなどを使って慎重に調製する必要があります(あとに述べる光軸調製の項を参照)。
[5]遮光環
絞り環(バッフル)の内径と位置について
これは正確な設計図を描いて決めるのが普通かも知れませんが、計算でも出ます
レンズの口径を ,焦点距離を,アイピースの視界環径を ,レンズから遮蔽環までの距離を,その内径を とすると;
   D=d−(d−s)L/f     L=f(d−D)/(d−s)
なお、アイピース(31.7mm)の視界環径 s の値は最大で28mm程度と思われます。


注1) 厳密には遮光環相互の最適な間隔を決めることも重要ですが、計算が厄介なので、ここでは遮光環相互の間隔を可能な範囲で短く(この場合25mm)することで妥協しました。
注2) 2インチアイピースや一眼レフでの直接撮影にも使用する場合には、上記のs値(28ミリ)では「けられ」が生じる可能性が考えられます;
その場合を考慮して、遮光環部分をユニット式にして鏡筒部分から取り外し可能として、その替わりに遮光環のない円筒(内面:遮光紙のみ)と入れ替えられるようにしました。
[6]光軸の調整と確認
主鏡筒の末端に120度間隔でΦ3ミリネジ用のタップを3本立て、ビスネジ3本を使って光軸調整できるようにしました。まず屈折用の光軸調整アイピースでおよその光軸を合わせ、ついで夜に星を眺めて微調整しますが、まあ自作屈折望遠鏡としては許容範囲かな?と思っています。

[7]ファインダー
今回は特に安価を目標にしたので、あり合わせのプラスチック製のファインダー(ジャンク品)を用いましたが、結構見え味がよいのでこれで十分と思っています。
ファインダーを固定するアルミ材を橋渡しのようにして前後の鏡筒バンドを連結したので、鏡筒バンドの強度が更に増したのは副産物です。


[8]フード
白色のフードは;
@ レンズハウスの周囲を自由に回転できるので、ピントを合わせたとき正しい位置にフードを回転でき、また;
A 前方にずらせば充分な長さのフード機能が得られます。

これで、レンズ以外はすべて自作となり、費用も安い筈ですが、実際には例えばボイド管は必要な長さだけ買うわけにいかず、またアルミ板も大きなサイズしかないなどの理由で結構費用はかかって仕舞いました。


設計図 (縮尺は正確ではありません)