ミニボーグで対空双眼
- 赤道儀にも同架可能 -
大口径の双眼望遠鏡というと松本氏のEMSを使うのが何よりです。
しかし若し小口径でも良いと言う条件なら,必ずしもEMSを使わなくても,直角または45度の正立天頂プリズムでもOKと思われます。ただし,EMS では @ 眼幅調節および A 光軸微調整用の装置が内臓されているのに反して,この場合には面倒でもそれらを自作する必要があります。
今回は上記の条件を満足し,しかも日曜大工程度の工作で何とか作れる中型対空双眼望遠鏡を作って見ましたのでご報告します;
なお,赤道儀に搭載しても常に自然な姿勢で観望できる回転式支持台を装着しました。

EMSを使わない場合には,どうしても望遠鏡の口径は最大でも眼幅を超えることは無理と思われます;つまり,レンズハウスの厚みも考慮するとレンズの口径は最大45〜50ミリ程度が限度と考えられます。幸いボーグの45mm ED を2個持っていたので,ちょっと贅沢?ですがこれを使用することにしました。
眼幅調節および光軸調整装置
眼幅調節範囲は59mm以上68mmまでとし,右の写真に示すような簡単な装置としました。 ご覧のように,左側の鏡筒台は固定ですが,右側の鏡筒台は中央のネジの回転でレール(アルミ製コの字材)に沿って左右どちらにも平行に動きます;
この場合かなり正確に作ったつもりでも右側鏡筒がわずかに首を振ってしまうことが判りました。そこで逆にこの僅かな首振りを右側鏡筒の光軸調節に応用しました;先端に袋ナットを付けたネジ2本で押し引きして微妙な左右方向の光軸調節が可能となりました。
なお,上下方向の光軸は左右の各鏡筒を作る際にそれぞれしっかり軸出しをしておけば,この程度の焦点距離の場合には全く必要ないことが判りました。
内径約55mmの塩ビ管にボーグ45 EDのレンズハウスをやや強引にねじ込みます。接眼部は内径50mmのボイド管や外径40mmの紙管(万華鏡プリンツ社製)やらを適当に使って,45度正立プリズムがしっかり挿入できるようにしました。
この際,光軸調整アイピースを使って,接眼レンズのスリーブが正確に対物レンズの中心を捉えていることを確認・調整する必要があります。
およその概念図を下に示します:内面はほとんど植毛紙の貼り付けで,絞り環は2枚です。
赤道儀用の回転装置
対空双眼鏡は普通は経緯台に乗せると思われますが,自動導入が可能な赤道儀に据えつけるのも一興です;スイッチ操作で目標天体が自動的に視野に現れるからです。ただこの場合には赤道儀の傾きに拮抗して双眼鏡の架台を手で回転させる必要がありそうです。
口径10センチクラスとなると,そのための回転装置はかなりの強度が必要で自作は一寸ムリと思われますが,今回の場合は幸い口径45mmの小〜中型のため,日曜大工程度の作法でも強度的にムリのないものが出来ました(右図参照)。
赤道儀上でどんな方向に向いても左右のアイピースを水平に修正できるので経緯台上で使用する場合と全く変わらない快適さが得られました。
視野の調整
第1段階(粗調整)
まず片目で遠方の風景を覗くと,第1図Aのように,左右の鏡筒の視野が多少ずれているのが普通です。そこで右側鏡筒の2本の調節ネジで微調整して,第1図Bのように左右の視野がほぼ同じになるように調整します(この操作は対物レンズとアイピースを除いた状態でも可能です)。
第2段階(微調整)
目幅が合った状態で充分遠い目標を両目で覗くと左右の目の映像が左右(および上下)にずれているのが普通です;このとき,第2図Aのようにもし上下方向にもずれている場合は鏡筒の設定方法または光軸不整ですから,鏡筒自体を別途調整する必要があるでしょう。
次いで左右のずれ(第2図B)を第1段階と同様にして2本の調節ネジで微調整します(第2図C)。
双眼鏡の場合には通常の望遠鏡よりも各部分の締め付けを遥かに強力にして,使用中に精度が損なわれないようにする必要があるのは言うまでもないようです。
赤道儀上での使用感
右の写真のように,赤道儀がどの位置で目標を捕らえても双眼鏡自体を自由に回転させることにより常に快適な姿勢で観望が楽しめます。
例えば木星を視野中心に入れて,赤道儀を同調させてから一気にアンドロメダやすばる星団を導入し,左右のアイピースを自分の両目に合うように回転させれば経緯台と全く変わらない使い勝手が得られます。
反省点
今回はたまたま持っていた45度の正立プリズムを使用しました。しかし市街地では天頂付近の星空が最も綺麗であることもあり,できれば90度正立の方が好ましいと思われます;今回は費用を節約したので天頂付近が多少見難い感じです。
 
念のため上面から見た概念図を付記します。
概要
対物レンズ:ボーグ45ED(焦点距離=325 mm)
接眼部:45度正立ミラー(プリズム式)
常用アイピース:WA 20mm 66°William Optics(USA);倍率約16倍
ピント調節:抜き差し式(実質固定)
目幅:59mm〜68mm
重量:赤道儀装着時:約2.4 kg,経緯台装着時:約1.8 kg

補足
本来の目的ではありませんが,赤道儀に同架しての観望の合間に,気に入った天体を見つけたら気軽にコリメート撮影することも可能です。デジカメと相性の良い接眼レンズを片側に挿入して,液晶ファインダーで適当にズーミングすればある程度自由な視野が得られ易いです。
下の写真はアイピースとしてMeade 32mmを用いて,Power Shot A640(Canon)で撮影した風景です(この双眼鏡にはピント調節機能がないのでだいぶ甘い像になっています)。
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