f
望遠鏡の計算式
写野の広さ(画角θ)は対物レンズの焦点距離(f)とカメラの受光部の大きさ(W)の函数となります。
1] 画角について
上の図で、tan (θ/2) = (W/2) / f = W / 2f ですから、θ/2 = arc tan (W / 2f) となり、受光部の長さ(例 えばフルサイズカメラセンサーの横幅=36mm)をレンズの焦点距離(例えば640mm)で割った数値の逆正接値を求め、次にこの数値(ラジアン)を普通の角度(°)に換算(180/πを掛ける)すればOKです。
言葉で言うと一見複雑そうですが、以下のように簡単に求められます;
nnnnnnθ=2×arc tan(W/2f)×180/π ≒ arc tan(W/2f)×360/3.14
  
nnnnn≒ arc tan(W/2f)×114.6
arc tanの値は数表で求めるよりも、エクセルを用いる方が簡単です;求め方はエクセル上で、
ATAN(W/2f) と入力して求められます。
望遠鏡の焦点距離と画角との変化を各カメラごとに纏めると下表および下図のようになります。
2014, October, 13

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天体望遠鏡を自作や改造する際に知っておくとたまには役に立つかも知れない種々の数値の求め方や計算方法を一括してみました。なお、結論だけでなく数式を導く過程もできるだけ付け加えましたので、面倒な方は結論のみご利用下さい。
ただし、良く知られている公式の他に、私自身の考えで作った数式も含みますので、ご自分で納得された上で自己責任でご利用くださるようにお願いします。
θ

種類

センサー

サイズ (mm)

横方向の画角(度)

レンズの焦点距離(mm

50 mm

100 mm

200 mm

400 mm

800 mm

フルサイズ

36×24

39.6

20.4

10.3

5.2

2.6

APS-C

22.3×14.9

25.1

12.7

6.4

3.2

1.6

フォーサーズ

17.3×13.0

19.6

9.9

5.0

2.5

1.2

2] 地上遠景と天体の合焦位置の差
天体望遠鏡を新しく購入したり、自作したりした場合にバックフォーカスが気になることがありませんか? 実際に夜まで待ちきれないときは、なるべく遠い景色を眺めて合焦させ、内側に少し余裕があれば一安心ということですが、合焦させた景色(例えば電柱の先端など)が近い場合には不安が残ります。
そこで、遠景での合焦位置(対物レンズからの距離=bとします)と実際の天体での合焦位置(対物レンズからの距離=f)の差(Δb=b−f)を求めると(遠景までの距離=aとします);
vvvvvv1/a + 1/b = 1/f より b=af/(a−f) 
vvvvvvΔb= b−f = af/(a−f)−f

f = 300 mm

f = 2000 mm

a (m)

Δb(mm)

Δb(mm)

100

0.90

40.8

300

0.30

13.4

1000

0.09

4.0

例えば、焦点距離300 mmの望遠鏡で300 m 離れた位置で合焦させた場合は天体では約 0.3 mmほどカメラ位置を近づけるだけですが、f=2000 mmでは差は約13 mmほどになり、必ずしも無視できない差となります。
3] 屈折望遠鏡の遮蔽環の位置とその内径
視界環径 S
望遠鏡には遮蔽環があった方が良いに決まっていますが、その際に視界環径(S)を決めることが前提となります。Sは観望用ならアイピースに、また撮影用ならカメラのセンサーサイズに最適と思われる数値を選ぶ必要があるでしょう。
以下最適のS値が決まったことを前提として、遮蔽環の位置と内径を求める式を示します。
上の図で、対物レンズ径をd、焦点距離をf、視界環径をSとします。また対物レンズからの距離 L の部分に遮蔽環を置くと仮定して、その内径をDとします。
上の図で直角三角形の部分に着目すると、
(d−S)/2:f=(d−D)/2:L ですから;
L(d−S)/2=f(d−D)/2,故に L=f(d−D)/(d−S)・・・・・ 1式
この式を変形すると、D=d−(d−S)L/f ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2式
ここで、dとfは望遠鏡の固有値です。またSは「けられ」を避けるためにはなるべく大きめの数値を設定しておいた方が無難でしょう。あとは、もしDを先に決めれば1式からLが、またLを予め決めれば2式からDが算出されます。

4] 屈折望遠鏡のフードの長さと内径
フードの内径は鏡筒の外径に依存して予め決定できると思われます。したがって、適切な長さだけを決める必要があるでしょう。しかし、(1)これが長すぎると風の影響を受け易いだけでなく、「周辺減光」が増強されるのでなるべく短くしたい、(2)周辺からの有害な光を遮断するためにフードはなるべく長くしたい、という全く逆の要因が考えられます。換言すれば、フードの長さはこうあるべきというような数 式だけで決定出来るものではなさそうだ、ということを前提に話を進めてみたいと思います。

フードの内径をD、レンズからフード先端までの長さ(L)とし、遮蔽環を外に延長するのと同じと考えるとすると、2]で述べたLの代わりに−Lで置き換えれば良いでしょう。つまり、
L=f×(D−d)/(d−S)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3式
となります。
しかし実際にはフード先端からレンズの周縁に入る光は当然屈折して受光面に到達(下図赤点線)するはずですから、許容されるフードの長さはLよりも大きな値(L')となると思われます。
このL'の値は光学の基本公式(1/a + 1/b = 1/f)を応用すると簡単に算出できますが、計算の過程では 三元連立方程式を解くことになりますので、ここでは、得られた結論のみを示すと;
L'=(D2+2Df−Sf)/2(D−S)・・・・・・・・・・・・・・・・4式
となります。
実際に、例えばボーグの101EDを例にすると:以下のようになります(単位=ミリ)。

D

S

L

L'

101

113

640

0

76

697

19

94

773

24

100

798

36

118

873

つまり、周辺減光を考慮しなければ、フードの長さはL'を超えなければ良いということになりそうです。 しかし実際問題としてはL'は余りにも長すぎるようですし、実際試してみると周辺減光がより著明とな りました(下の写真参照)。
結論的には、1)迷光がある程度遮断され、2)周辺減光の程度が許容範囲であるようなフードの長さを 実地に即して決めるのが良いのでは?と思われます。その際には一応、Lの値を参考とするのは一つの方 法かもしれません。
5) 2群レンズ系の合成焦点距離とバックフォーカス
望遠鏡による撮影の際にレデューサーを用いることが多く、その際気になるのは合成焦点距離および特にバックフォーカスが充分かどうか?という点ではないでしょうか?
そこで一般に2群のレンズを用いた際の合成焦点距離(f)および第2レンズから焦点までの距離などを求める公式について述べます。

ちょっと面倒ですが,下図のように第1と第2の二つのレンズ(群)を使った望遠鏡を考えます;
第2レンズ
第1レンズ
仮想レンズ
第1レンズ(焦点距離f1)を透過した光(黒点線)は右方Dの距離にある第2レンズで更に屈折(赤点線)し,右方 Lの距離で結像するとします。この位置で結像するような仮想レンズを想定すると、この仮想レンズの焦点距離が合成レンズ系の焦点距離 (f)です。

ここで、合成レンズ系の基本公式を信用(?)すると、
  f(合成焦点距離) = f1×f2/(f1+f2−D) -----------------------------------1)
  L (第2レンズから合成焦点までの距離) = (f1−D)×f2 / (f1+f2−D) -----------2)
 
すなわち,Dを決めれば式1) からf(合成焦点距離)が決まり,式2) からL(バックフォーカス)が決まります。更にLの値(バックフォーカス)を予め決めれば、式2)からDの値が決められます。
D = f1− f2×L/(f2−L)  ------------------------------------------------3)

要するに、必要なレンズ間隔(D)を含む他のすべてのパラメーターが決められます(因みに、Mの値を
知りたい場合は、図から明らかなように、:M=D + L−f となります)。
Borg 45 ED II (f = 325 mm) のレンズハウスにケンコーAC Close Up レンズ No.3(f = 330 mm)を取り付けると、合成焦点距離 330 mm; F = 3.8 のカメラレンズ(?)に早代わりです。
D = 23 mm, L = 158 mm ですが、これも実測値と計算値はぴったり一致します。

なお、実写してみたところ、「周辺減光」はほとんど感じられませんでした。
Borg 101 ED (f = 640 mm) の接眼部にケンコーのClose Up レンズAC No.3 (f = 330 mm) を装着し一眼レフでピントを合わせました。
その際の実測値は、D≒525 mm、L≒83 mm でした。
これらの距離は巻尺で測った程度で余り正確ではありません。
一方、上記の計算式で、D=525 mmとしてLの値を算出するとL=85 mm で、ほとんど両者は一致しました。
他の例でも試して見ましたが、実測値と計算値の差はいずれも2〜5ミリ以内でした。
上記の1)から3)の式ではいずれもレンズの厚さは無視しているので、この程度の誤差は許容範囲と考えられます。
実例 1
実例 2