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@
普通の反射望遠鏡
2013, June, 02
〜 August、03
なるべく普通と言える反射望遠鏡を作りたくなりました; まず軽くて取り扱い易いこと、観望以外に一眼レフによる直接撮影ができること、ベランダでの取り回しがよく頑丈で安心感が持てること、などを最低条件としました。

口径 20 センチは主鏡セルも入手し易く魅力的ですが、重くて取り扱いにくそうなので敬遠。市街地での観望・撮影を考えると 15 センチが最適のように思えます。
既製品ではこの口径は余り見受けません; カサイさんの15cm;F4は、安価・軽量で気に入っていますが、F4である事と、筒外光路長が異常に長いことがいまいちという感じです。やはり市街地ではF5の方が使い易そうに思えます;逆にF6以上では、暗いのは我慢としても鏡筒が長大となり格好悪そう??です。
設計の時点でのもう一つの問題点?は、カメラの位置です;

反射望遠鏡の場合、カメラは下側または上側にすることで赤道儀上でのバランスが良くなりますが、ベランダ撮影では横側の方が取り回しが良いように感じられます。

ところがその場合にはカメラ側が重くなりフリーストップの妙味(?)が損なわれます。
うまく重心をとるためには、
@ カメラと反対側に重いファインダーをつける(右図の上)、または
A 鏡筒に対してアリガタをややカメラ側に寄せてバランスをとる(右図の下)、
という二つの選択肢が考えられました。

@ の場合は構造が簡単ですが、実際の操作の上では不便です。

A の場合では構造上の剛性が気になりましたが、2mm厚のアルミアングル材で木製の板を補強することで @ と変わらない強度と剛性が得られました・・・もちろん、露出が60分を越えるようなガイド撮影にはムリと思われますが、市街地では10分程度が限度なので、その目的ならこれでも充分と考えられました。

次は鏡筒をどうするか?という最重要課題です。
軽くて頑丈が趣旨ですから、ボイド管ということになるのは当然としても、問題は直径です。
直径を規定する因子は、@入手できるスパイダーの最小直径と A 入手できる鏡筒バンドの内径です。
スパイダー(GS:0.5mm);最小内径=166mm
鏡筒バンド(GS:);内径=176mm
ということで、鏡筒外径を175.5mm(肉厚4mm)程度にするとぴったりということになります。

市販のボイド管でこれに近いものとなると、内径175mm、外径183mmというものが入手可能です;ところが、これでは約8mmほど直径が太すぎて使用不可能です。

となるると、面倒でも直径短縮作業が不可欠になります;
ボイド管の外周を実測すると574.6mmでしたので、これを:
574.6−(175.5×3.14)=23.5mm
短縮する必要がありました。

ボイド管に巾23.5mmで2本の線を引き、これに沿ってノコギリで正確に切断です(結構神経を使います)。
切断したボイド管をバスタブに入れて少し水を含ませてから、徐々に鏡筒バンドで締め付けていくと正円に近くなり、ホッと一息です。

175
167
スプリング
袋ナット
鬼目ナット
鬼目ナット
主鏡
15cm、F5(カサイ)を使用しました。
引きネジは省略して、代わりにかなり太い頑丈なスプリングを使用しました。押しネジの先端には袋ナットを固くねじ込んであります(押しネジそのものは鬼目ナットを介して押したり引いたりする形です)。

下図の赤い部分は円形の木板で、これはドイトの工作室で切り抜いてもらいました。鏡筒への固定は3箇所に埋め込んだ鬼目ナットを介して行いました。
斜鏡およびスパイダー
短径 50mm (GS社)を使用しました(面積遮蔽率=11%)。
スパイダーは鏡筒が開いた状態で嵌め込み、次いで鏡筒バンドを締め付けた状態でしっかり固定という順番をとりました(スパイダーに対して鏡筒径がぎりぎりなので、やむをえないです;鏡筒の切断面はずれが生じないように別途補強しました)。

植毛紙の貼り付け

鏡筒内部には実質100%植毛紙処理をしました。植毛紙を直接鏡筒内部に隙間なく貼り付けるのは至難と言うよりもほとんど不可能に思えます。そこで、予め鏡筒内にきっちり収まるボール紙(黒ボール)の円筒を三つほど作り、それぞれの内側に植毛紙を貼ることにしました。

具体的には植毛紙を余分のボイド管に軽く巻きつけるようにセットし、これに黒ボールを被せるようにしながら徐々に植毛紙の裏紙をはがして密着させます;この方法だと植毛紙に皺がよることが防げます。

できあがった黒ボール(内側は植毛紙)の円筒をすっぽりと鏡筒内部に挿入しました。もちろん接眼部やスパイダー装着用の穴などにあたる部分は予めそれに適した形状にしておく必要があります。

接眼部
接眼部は今流行の繰り出し式よりもヘリコイドを使用しました。
最近、ボーグからM57ヘリコイドLIII(品番:【7861】)というのが発売され、これは従来品より光路を食いますが、遥かに頑丈で一眼レフを接続してほとんど不安を感じないように思われました。
また、これなら鏡筒の直径に余裕がなくてもピント調節の際に繰り出し部分が光路を遮蔽する懸念がなく、しかも軽量というメリットが期待できます。目盛りがついているだけに、ピントも調整しやすいというメリットもありそうです。
アリガタ
M57ヘリコイド
鏡筒台座
鏡筒と赤道儀とを接続する台座の部分では、右図のようにアリガタを鏡筒中心よりも接眼部(カメラ)側に少しずらしてあります(鏡筒にカメラを装着した状態での重心の位置です)。
これにより、鏡筒を赤道儀に乗せた場合、クランプフリーの状態でほぼ安定します。赤道儀はGPDなので、赤緯側のモーターの負担を軽くできそうに思われますし、最初の目標天体を導入する際もクランプフリーだとかなり楽に操作できるというメリットを重視しました。

さて次は肝心の天体撮影ですが、生憎の梅雨空でなかなか機会に恵まれません。
光軸はおおむね合わせたつもりですが、どうなるか晴れた夜の訪れが楽しみと言った状況です。
撮影
ピント調整を怠ったため、星が大きく肥大しているようです。
これもすごいピンボケ
EOS X5 :液晶部分をルーペで拡大して合焦させる。トリミング(約80%)
フラットナー使用;15秒2回合成