方位・高度目盛り環付きクランプフリー経緯台の設計と製作
ただいま、作成中です
経緯台と言うとまずビクセンのHF経緯台とボルタ経緯台が目に浮かびます。それぞれ特徴のある優れた製品と思われますが、欠点?も無いわけではないと考えられます。

自動導入のできない経緯台で夜空の目立たない天体を探す場合、その時点での方位と高度は一応の目印となりそうです。つまり、@ 二軸とも目盛り盤があると何かと便利と思われます。もう一つ欠かせないのは A 望遠鏡が全方向でクランプフリー状態でスムースに動かせると快適性が向上するでしょう。

以上の二点を考慮して手動経緯台を作ってみましたので、ご報告します。

既成のビクセンの製品と今回の自作品を比較してみました。
アリミゾの方向 長所 短所 対空双眼鏡の同架
A) ポルタ経緯台 垂直方向
小型軽量 @荷重・鏡筒径に制限あり
A天頂が苦手 Bファインダー位置を90度回転させる必要がある。
軽量のもの
(付属器具が必要)
B) HF経緯台 水平方向 大型大荷重適応 大口径の場合には、クランプフリー困難

かなり大型でもOK(横幅制限あり)

C) 今回の自作経緯台 水平方向

@高度、方位目盛り環付き
A全ての高度でクランプフリー可能

鏡筒重量に応じたウエイトが必要 かなり大型でもOK
(横幅制限なし)
高度軸がクランプフリーとなる条件

A)上記のA)は構造的に常にクランプフリーと言えますが、使用できる鏡筒の直径に制限があります。
B) 太い鏡筒の場合、必要なクランプの程度が高度で異なり、特に天頂付近では強いクランプが必要。
C) 今回の自作経緯台では、@ 鏡筒の太さに関係なく、A 天頂でも水平でもクランプフリーにできます。
上図C)の場合には、@ 鏡筒の重心とウエイトの重心を結ぶ直線が回転軸の中心を通り、なおかつ A 鏡筒とウエイトの重量が回転軸上で釣合っていれば、鏡筒の向き(地平線から天頂まで)に関係なくクランプフリーの状態で鏡筒は静止します。とは言っても実際には若干の誤差が生じますので、クランプは軽く締めておく方が無難です。

以上を踏まえて実際の 製作です;

1]台座

@ ビクセンの三脚に木製円盤(DIYに依頼)を乗せます(三脚の突起が収まるように穿孔)
A やや直径の大きな円盤を乗せ、目盛り環がずり落ちないように黒ボールで「敷居」を作成します。
B 印画紙にプリントした目盛り環を嵌め込みます;この段階で中心軸をナット(写真では写っていません)で締め付け円盤を固定します。目盛り環は単独で滑らかに回転できます。
C 更に別の円盤にボーグの小型鏡筒バンドを固定し、円盤とともに滑らかに回転できるように装着します。
2]高度側の回転軸
1:ボーグの60φ延長筒を反射望遠鏡用の接眼部金具にネジ込んでしっかり固定(図 D の左上)

2:市販の5mm厚L字型アルミ板にアリミゾ金具とウエイト支持用のコの字型アルミ材をしっかり固定(図 E の右 )

3:上記アルミ板を接眼部金具に固定(木製板:図 Dの左下で挟み込む;図 E)

4:ボーグの小型鏡筒バンドを軸受けとして使用しました(図 F )。
(これはとてもスムースな回転を可能にします!)
上の G 図は、回転軸+アリミゾの部分(E 図)を鏡筒バンド部分(F 図)に挿入し、更にウエイト軸を固定した状態です。

水平方向の回転は木版と木版が摺り合わさるので若干の抵抗が感じられます。

一方、高度方向の回転は真円度の高い金属鏡筒とそれに適合した鏡筒バンドの組み合わせなので、実にスムースに気持ちよく回転してくれました。
D
F
G
E
3]望遠鏡の据付け

@:まず望遠鏡を垂直にして丁度釣合うようにウエイトの重量と位置を調整します。
A:水平またはそれに近い程度の仰角にして、望遠鏡の前後位置を調整(下図の場合は接眼部方向にずらす)
B:これで全ての仰角で釣合いがとれている筈です。もちろん鏡筒の重量に応じてウエイトを選ぶ必要があります。理屈っぽく言えば、B 図で、a×W=b×T ですから、W=T×b/a となり、
要するにウエイトの重さ(W)は、鏡筒の重さ(T)のb/a倍程度ということになりますが、その辺は計算するより勘に頼った方が早そうです。
B
A
@
4]観測体勢

中型の屈折望遠鏡が似合うようです(左)。

比較的重い鏡筒でもビクセンのR200S程度なら、実に快適な操作が可能です。
ただし赤道儀に搭載した場合よりも幾分鏡筒を手前に移動する必要があります。

注:
もしアリガタレールの長さなどの関係でこれを避けたい場合は、ウエイトシャフトを長くする必要があります(下の図参照)。

その場合には当然 W 2を軽くしないと意味がありません。
また三脚との干渉がある場合は、ハーフピラーをつけてウェイト軸と三脚との干渉を避けるか、または極端な低空の観望をしないなどの割り切りが必要となる可能性があります)
5]欠点について

架台としての強度は想像以上に頑丈で、8〜9 kg 程度の鏡筒なら充分に実用的です。しかし何分にも肝心のスケール部分が写真用印画紙なので雨には弱いはずです。
と言っても、いちいち室内に収容するのも面倒(というより邪魔??)なので、鏡筒だけ外して専用の日よけ雨よけケースを作って被せておくしかないかな、と思っています。
L2
L1
W2
W1
6]天体の導入

天体の時々刻々の方位と高度が解るソフト(例えばステラナビゲーター)があると便利と思われます;
まず名前の解る明るい天体を手動で視野に導入します。ただちに方位環と高度環の目盛りを回転させて、その数値に合わせます。
その後は目的の天体の現在時点の方位および高度に合うように鏡筒を動かせばほぼ目的の天体は少なくとも視野の中央付近に見えるはずです。とはいえ、余り高倍率ではムリでしょう。目盛り環の最小目盛りはいずれも2度ですので、その半分の1度、つまり月の直径の2倍程度の誤差は少なくとも覚悟する必要があると思われます。(まだ実際の観望の機会に恵まれていないので、実験が出来次第あらためてご報告します)