汎用電動フォーカスユニットの製作
現在市販されている電動フォ−カッサーについては充分な知識を持ち合わせていませんが,多分既製品としては次のような問題点?があるのではないかと想像されます。

1) 比較的高価と思われる。
2) 使用できる鏡筒が1:1に限定されている。

そこで,
@ 比較的安価に入手できる模型材料としての部品(モーター,ギヤetc.)を使用し,しかも
A 種々のタイプの望遠鏡に流用できる汎用型の電動リモートフォーカス調節ユニットを作ってみました。

極めて素朴な発想だけに,何を今更と言われるのを覚悟でご報告します。

モーターとしては,ステップモーターは取り扱い経験がないので敬遠し,ギャ内臓のごく通常のモーターを使用しました。また望遠鏡側の微動調節ノブを超低速で回転させるために,ウオームギヤを使用しました。

先ずモーター選びですが,小型で減速比の大きいものとして,図1のものを選びました;やや高価ですが,減速比率297分の1で15〜50 rpm が得られます。これに歯数40の平ギヤ(Φ20mm)とウオームギヤとを組み合わせると,全体としての回転速度は約0.4〜1.2 rpm(0.007〜0.2 rps)が得られます。

これならモーターに加える電圧を加減すれば,0.02 rps(ギヤの回転速度は1秒間に約50分の1回転)以下程度の低速が得られ,望遠鏡側の微動ノブに伝える回転速度として大きすぎることはないと考えられました(図2参照)。

1:電動部ユニット

アルミのアングル,平板,コの字材などを適当に使って,なるべくコンパクトに作成しました(図3-AおよびB参照)。

平ギヤの直径は約20ミリ,歯数は40ですので,回転数は加える電圧にもよりますが,前回作った出力ボックス(4.5ボルトのACアダプター使用)と接続し,出力を最も弱めた際の実測値は約0.01 rps(1秒で約1/100回転)程度でした。


2:カメラ望遠レンズ(ニコン300mm,F2.8)

電動部ユニットの回転力をカメラレンズのフォーカスリングに伝える場合,ギヤは使用できません。
そこで,@ 厚手のボール紙を5枚ほど重ねて糊づけして,A これを回転式のカッターで円形に切り抜き,B それに模型用のゴムタイヤを嵌めた車輪状のものを作り,C ギヤと同軸に固定したものを作成しました;軸はΦ3mmのアルミ棒で両端にダイスでネジを切りナットで抑えるという形式です(図4参照)。

このゴムタイヤの部分を望遠レンズのフォーカスリングと軽く接触する位置でユニットを固定すると出来上がりです(図5)。

右に参考図として掲げた電源ユニット(「対物レンズ移動型電動フォーカスカメラ望遠鏡」の項をご参照下さい)と接続し,電流を流すと驚くほどスムースにレンズ側のフォーカスリングが,うっかりすると気がつかないほどゆっくり回転します。
しかし,いくら回転速度が遅いと言っても通電時間が長いとフォーカス位置を通り越してしまいますので,丁度自分がステップモーターの発信回路になったつもりで,1回について0.5〜1秒程度の感じで通電を繰り返し,行き過ぎたら逆転させるという方法をとる必要があります。


勿論,室内のパソコン画面を見ながら冷却CCDをフォーカスモードにして指標の数字が最大となるように上記の遠隔操作を繰り返します。室内でフォーカスを調節できるので合焦(の程度)の確認には自信がもてるようです。

低空だった天体の高度が増した際などの焦点の微調整には特に役立ちます。
3:カセグレン式望遠鏡(C5)

セレストロンのC5の場合には,微動ノブに内径22mmの塩ビ管が具合よく押し込められることが分かりました。
この塩ビ管に目盛を印刷した紙を両端が重ならないように糊付けし,更に極薄の両面テープを使って目の細かいサンドペーパーも同様に巻きつけました(図6参照

こうすると,回転部の「ゴムタイヤ」の表面もざらざらしているので,カセグレンのピント調節ノブの「サンドペーパー」部分との間の摩擦が大きくなり,空回りすることなくモーターユニットの回転がスムースに伝達できました(図7参照);C5の微動ノブを外してギヤと入れ替える方法でも良いと思われますが,面倒なので手を抜きました。

カセグレンの場合にはその構造上,調節ノブに余計な応力は加わらず,しかも軽く動くので,これをわざわざギヤに交換するよりもこの方が簡便で実用性は充分と思われます。
C5にこのユニットを接続した際の状態を図8に示します。
実は個人的にはこのカセグレン系の望遠鏡の焦点合わせには一番神経質になっていたので,この装置がうまく行ったことでピント合わせがずっと楽になりました。
グレイフォード式微動装置(ボーグ101 ED)

フェザータッチと呼ばれる部分の微動調節用のつまみを外し,真鍮製の平ギヤ(軸穴Φ3 mm)と交換し,ユニットのギヤと直接噛み合せます(図9参照);
つまり,この場合はゴムタイヤの部分は遊んでいます。取り外すこともできますが,特に邪魔にならないのでそのままにしています。

鏡筒台は幸い木板にしていたので取り付けは至って簡単です;

カメラは勿論ライブビュー機能があり,パソコンのモニターでピントが判断できる機種でないとリモコンの意味がありません。冷却CCDの場合は特にリモコン撮影との相性が良いと思われます。

ただ,ちょっと不安の種は機種によっては冷却CCDはかなりの重量があり,鏡筒が天頂付近を見上げるような状況でもこのモーターでその機材を垂直に近い状態で上下に操作できるかどうかです;

しかし,実際に試してみるとモーターの減速比が大きい(11,880分の1)ため末端トルクが強く,ほぼ鏡筒が垂直でも全く問題なく軽々と冷却CCDを持ち上げてくれることが分かりました。

更に,微動装置のストッパーは効いていないにも拘わらず,ウオームギヤが入っているため,重力によってずるずるカメラが滑り降りることも勿論ないという実際上のメリットも実感できました(図10参照)。


結論

たった一つの「電動ユニット」を作るだけで少なくとも3種類の鏡筒に対して,ワンタッチで交換できる互換性リモコン合焦装置が出来ました。反射式望遠鏡にはまだ応用していませんが,問題なく応用可能と思われます。

これで寒い冬の深夜でも暖かな撮影環境が夢ではなくなりました;勿論天体ドームをお持ちの場合には無用かも。

諸元

ユニットの寸法(mm):高さ26,長さ72,横幅30(回転軸を除く)
ユニットの着脱:各望遠鏡台座に予め固定したアルミ板のネジ穴に2本のビスで固定(着脱時間:各1分程度)
モーター:エスティーエルジャパン社,HS-GM21-DLG,回転数:15〜50rpm,減速比:1/297,推奨電圧:DC 1.5〜6 V
ギヤ:ウオームギヤ(軸穴Φ3mm),平ギヤ(歯数40)
ゴムタイヤ:径約24mm,幅約5mm(模型店で発見)
電源:ACアダプター(4.5V, 500mA),20Ωバリオーム+5Ω固定抵抗(「対物レンズ移動型電動フォーカスカメラ望遠鏡」の項をご参
照下さい)
減速比:11,880分の1
回転速度実測値:約0.01 rps程度(1秒間に約100分の1回転)
重量:約75グラム


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