対物レンズ移動型電動フォーカスカメラ望遠鏡
寒い夜ベランダに出て焦点合わせするのは結構辛いものです; 特に冷却CCDの場合には戸外(ベランダ)に持ち出したパソコンの画面と見比べながら合焦位置を探す必要があります。当然寒風が身を刺す状況です。できれば,暖かい室内でリモートコントロールで焦点が合わせられれば,という大変ものぐさな思いから,またヘンな望遠鏡を作って見ました。

カメラ側(接眼側)はしっかりと固定したいので,対物レンズの方を前後に動かす方法を採用しました。

初めての試みなので大口径は避けて,Borg 76 ED
(f=500mm)を使用しました。

対物レンズの付いた鏡筒を押し引きネジを介して,
模型用のモーターで前後に微動させるというもので
す(右図)。

凡その設計図(概念図)を下に示しました。

一番の問題は対物側の可動鏡筒(Φ82mm塩ビ管)と接眼側の固定鏡筒 (Φ75mmボイド管)との摩擦を少なくして,しかもガタつきが無視できる程度とすることです;右の図のように3本の細いボール紙で隙間を埋め摩擦抵抗を減らしました。注意深く作るとほとんどガタはなく,しかも滑るように軽く動くようにできます。シリコンスプレーを塗布すると更に滑りは良くなりました。

次の問題は駆動モーターですが,幸い現在では模型ロボット用などと称する小型モーターでしかも減速ギヤ内臓の製品が結構安価に市販されています。

次はモーターを動かすリモート装置ですが,幸い鉄道模型の経験もあったので簡単に制作できました。パイロットランプを省略すればもっと単純な回路にできます。
概 要
対物レンズ: ボーグ76 ED (F6.6; fl=500mm)
合 焦: 自作電動遠隔操作(対物レンズ移動式;モーター:タミヤ製 7 rpm)
カメラ: 冷却CCD(ST2Kオートターレット付き)または一眼レフ(Canon Kiss X2)
ファインダー: 自作2軸微動式台座(タカハシΦ30mm装着)
フリップミラー: Vixen製,光害防止フィルター(IDAS LP-2)内臓
主な鏡筒材料: 対物側鏡筒=Φ80mm塩ビ管,対物側鏡筒=Φ75mmボイド管
絞り環: 2群(4枚+2枚),合計6枚
光 軸: 対物レンズ中心につけたマークを指標として反射鏡用光軸調整アイピースで確認
重 量: 約2.5 kg(フリップミラーを含む)

使用感
スゴイの一語です;暖かい部屋で先ずピントの確認。暗い小さな星にウインドウを絞り込み,冷却CCDが表示する数字が最大となるように調節しますが,その間モーターの僅かな唸り声も頼もしく感じられます。モーターを逆転させてもその為に映像が動くことはありません。
木星の衛星はこのピント合わせ操作の目的には最高と思われます。Borg 76EDは大口径ではありませんが,信頼が置けるレンズで安心して撮影できます。この望遠鏡システムを使うと他の鏡筒の使用が面倒になるのも不思議です;やっぱり,室内から遠隔操作でピントが合わせられるのは冬の楽しみの一つになりそうな予感です。
多少の苦心はありましたが,実用性という点からも作って良かったというのが実感です(2010年12月6日記)。

余 談
この望遠鏡は今までのうちで一番「作り甲斐」があったと思っています。とにかく気に入っています。
特に寒がりで面倒嫌いな私にはうってつけのように思われます。今後はこの望遠鏡一本で撮影に励みたいと思いますが,やはり口径不足がやや残念かも? しかし他の望遠鏡にはない派手好みのスタイルにもやや満足です。
最後に望遠鏡とは全く無関係ですが,コントロールボックスの製作中に感じたダイオードを利用した「安全装置」と「パイロットランプ(LED)の制御」について蛇足ながら付記させていただきます:もしご参考になれば幸いです。

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