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EMSによる光軸平行型ニュートン反射
たとえば南向きのベランダで屈折またはカセグレンを使用する場合には,真東から南を経て真西までの天体を見るのは容易です。しかし,反射鏡の場合には南より西側に向けると自分の居場所がなくなるため,反射鏡筒自体をぐるりと回転させる必要がありそうです。自動導入をしている場合には再度設定のやり直しということになりかねず,何よりも億劫になって仕舞います。
そこで反射望遠鏡でも屈折やカセグレンと同じようにできないか?ということで,反射鏡を利用した光軸平行型のニュートン反射鏡筒の作製を試みました。この形式は,海外では試作レベルで作られたそうですが,市場性という点ではほとんど不成功のようです;ただ,屋外で使用する場合を除き,日本国内のようにスペースの限られたベランダなどで気楽に使用する際にはメリットはありそうです。
反射鏡として通常の天頂ミラーを流用すると見える像が裏像となり気持ちが悪いので,松本式EMS(Erecting Mirror System)を使用しました。これだと,カメラでは倒立正像ですが,眼視では正立正像が得られ,極めて快適な環境が得られます。
出来上がりはこんな具合です。鏡筒と鏡筒バンドはボイド管製ですが,強度は充分です。主鏡径は13センチ,焦点距離は780ミリ(F6)です。カメラのピントが出るようにしたので,筒外光路はその分余計に長くなりました。斜鏡はしたがってかなり大型となり,短径=60ミリが必要でした。それでもまだ若干の周辺遮蔽(20%)が生じ,中央遮蔽を含めた光量利用率は約60%となりました。
こうのように光学的に見た場合の性能は多少犠牲となりますが,しかし常に目標天体の方向に眼を向けることができ,かつ立派な正立正像が得られるという点では極めて快適です。筒外光路が長い分だけ鏡筒は短くなり,ベランダでの取り回しも最高です。
またEMSの特徴として,下の写真のように見る姿勢により接眼部を回転させても常に正立正像が得られます。
蛇足ですが,この望遠鏡では主鏡セルを鏡筒とは独立に製作(上右図)したので,この部分を鏡筒から引き出した状態で固定すると,筒外光路を短く(正常に)することも可能です。その際に斜鏡も小型のものに交換すれば,光量利用率は更に向上します;ただし普通の反射望遠鏡になりますが・・・